知らないとマズい!新リース会計基準の変更点まとめ|中小企業への影響と今すぐ準備すべきこと

新リース会計基準の適用が迫る中、「結局、何がどう変わるのか」「中小企業である自社への影響は?」「今から何を準備すればいいのか」といった疑問や不安を抱えていませんか?本記事では、新基準の最大のポイントである「すべてのリースの原則オンバランス化」が、企業の貸借対照表(BS)や損益計算書(PL)、経営指標に与える具体的な影響を徹底解説します。結論として、新基準への対応は早期の計画的な準備が不可欠です。この記事を読めば、会計処理の変更点から具体的な仕訳例、中小企業が利用できる経過措置まで、実務に必要な知識がすべて分かり、スムーズな移行に向けた第一歩を踏み出せます。

目次

新リース会計基準とは そもそも何が変わるのか

新リース会計基準とは、企業会計基準委員会(ASBJ)が開発を進めている、リース取引に関する新しい会計処理のルールのことです。これまで日本の会計基準では、リース取引を「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の2種類に分類し、会計処理を区別してきました。

このうち、オペレーティング・リースは、賃貸借取引として扱われ、支払ったリース料を費用として計上するだけで、貸借対照表(BS)には資産や負債を計上しない「オフバランス処理」が認められていました。しかし、新リース会計基準では、この考え方が大きく変わります。

最大の変更点は、短期リースや少額リースなどの一部の例外を除き、これまでオフバランス処理が可能だったオペレーティング・リースを含む、ほぼすべてのリース取引を資産・負債として貸借対照表(BS)に計上する「オンバランス化」が原則となることです。これにより、企業の財務実態がより正確に財務諸表に反映されるようになり、投資家などが企業の財政状態を比較・分析しやすくなることが期待されています。

新リース会計基準の適用はいつから?対象企業を解説

新リース会計基準の適用時期については、現在公表されている公開草案によると、以下の通り提案されています。ただし、これはまだ確定情報ではないため、今後の正式な公表を注視する必要があります。

項目内容(公開草案段階)
原則適用2026年4月1日以後に開始する事業年度の期首から
早期適用2025年4月1日以後に開始する事業年度の期首から適用可能
対象企業上場企業や会社法上の大会社などが主な対象。ただし、連結財務諸表を作成していない企業や中小企業向けには、経過措置や簡便的な会計処理が検討されています。

基本的にはすべての上場企業および大会社が対象となり、対応が必須となると考えておきましょう。特に、店舗や設備などをオペレーティング・リースで多数契約している小売業や運輸業、航空業界などは、財務諸表への影響が大きくなるため、早期の準備が不可欠です。

なぜリース会計基準が改正されたのか その背景

今回のリース会計基準の改正には、大きく分けて2つの背景があります。

一つ目の背景は、企業の財務実態をより正確に財務諸表へ反映させるためです。従来の会計基準では、実質的には借金をして資産を購入しているのと経済的実態が変わらないにもかかわらず、オペレーティング・リースを利用すれば、多額のリース契約を抱えていても資産や負債が貸借対照表(BS)に計上されませんでした。この「オフバランス」の仕組みは、企業の負債が過小に表示され、投資家などが企業の本当の財政状態を把握しにくいという問題点を抱えていました。新基準によってすべてのリースを原則オンバランス化することで、財務諸表の透明性を高め、比較可能性を向上させる狙いがあります。

二つ目の背景は、国際的な会計基準との整合性を図る(コンバージェンス)ためです。海外では、すでにIFRS(国際財務報告基準)や米国会計基準において、リースを原則オンバランス化する会計基準が導入されています。グローバルに事業を展開する日本企業が増える中で、国内外の会計基準に大きな差異があると、海外の投資家が日本企業の財務諸表を正しく評価できなかったり、海外子会社を持つ企業がグループ全体の会計処理を統一する際に手間がかかったりする問題が生じます。今回の改正は、こうした国際的な会計基準との差異を解消し、日本企業の国際的な競争力を維持・強化する目的も含まれています。

IFRS第16号や米国会計基準との関係性

日本の新リース会計基準は、先行して導入されている国際的な会計基準、特にIFRS第16号「リース」を基礎として開発されています。これにより、会計処理の基本的な考え方はグローバルスタンダードに近づくことになります。

ただし、IFRSと米国会計基準では、リースの会計処理モデルに違いがあります。日本の新基準案がどちらの考え方を採用しているかを理解しておくことは重要です。

会計基準モデル概要
日本の新リース会計基準(公開草案)単一モデルIFRS第16号と同様の考え方を採用。原則としてすべてのリースを資産・負債として計上し、損益計算書(PL)では減価償却費と支払利息を計上する。
IFRS第16号単一モデル借手の会計処理について、すべてのリースをファイナンス・リースと同様に処理する。
米国会計基準(ASC Topic 842)デュアルモデルリースを「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」に分類。どちらもBSに資産・負債を計上するが、PL上の費用計上の方法が異なる。

このように、日本の新リース会計基準案は、IFRS第16号と同様の「単一モデル」を採用することが提案されています。これは、リースの種類によって損益計算書(PL)への影響が異なる米国基準のデュアルモデルよりも、会計処理のシンプルさを重視した結果と言えます。この単一モデルの採用により、国際的に事業を展開する企業にとって、IFRS適用企業との財務諸表の比較が容易になるというメリットがあります。

【徹底比較】新リース会計基準の重要な変更点3つ

【徹底比較】新リース会計基準の重要な変更点3つ(図解) 1. すべてのリースが原則オンバランス化(短期・少額は除外可) 従来(オペレーティング・リース) 資産 負債 BS計上なし(注記のみ) BS計上なし(注記のみ) 新基準(使用権モデル) 資産 負債 使用権資産 リース負債 短期・少額は除外可 2. PLへの影響:費用の前倒し(減価償却費+支払利息) 減価償却費(定額) 支払利息(逓減) 従来:定額の支払リース料 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 合計費用は初期が大きく、期末に向けて逓減(費用前倒し) EBITDAは見かけ上改善 3. 借手の会計処理フロー(設例:5年・年120万円・割引率3%) 開始時(認識) 借方 使用権資産 5,510,000 貸方 リース負債 5,510,000 オンバランス化 1年目 期末支払 借方 リース負債 1,034,700 借方 支払利息 165,300 貸方 現金預金 1,200,000 1年目 決算 借方 減価償却費 1,102,000 貸方 減価償却累計額 1,102,000 注:例外(短期・少額)を除き、契約ごとに利息計算・残高管理が必要となるため、システム対応が重要です。

2026年4月以降に開始する事業年度から適用が予定されている新リース会計基準。その変更点は多岐にわたりますが、特に実務に大きな影響を与える重要なポイントは3つに集約されます。ここでは、従来の会計基準と比較しながら、何がどのように変わるのかを徹底的に解説します。

変更点1 すべてのリースが原則オンバランス化される

新リース会計基準における最も大きな変更点は、これまでオフバランス処理が認められていたオペレーティング・リースを含め、原則としてすべてのリース契約が貸借対照表(BS)に資産・負債として計上される「オンバランス化」です。これは「使用権モデル」という考え方に基づくもので、借手はリース資産を使用する「権利」を資産として認識し、将来のリース料支払義務を負債として認識する必要があります。

ただし、実務上の負担を考慮し、「短期リース(リース期間が12ヶ月以内)」や「少額リース(リース資産の価値が低いもの)」については、オンバランス化の対象外とする簡便的な処理が認められる見込みです。

使用権資産とリース負債とは

オンバランス化に伴い、貸借対照表(BS)に新たに登場するのが「使用権資産」と「リース負債」という勘定科目です。

  • 使用権資産
    リース契約によって得られる「リース資産を一定期間使用する権利」を指します。これは有形固定資産などと同様に資産として計上され、リース期間にわたって減価償却されます。
  • リース負債
    将来支払うべき未払リース料の総額を、契約時の割引率で割り引いた現在価値で算出したものです。これは企業の負債として計上され、リース料を支払うたびに元本部分が返済されていきます。

つまり、新基準ではリース契約を「資産(使用する権利)を借金(将来の支払義務)で購入した」と捉え、その実態を財務諸表に反映させることになります。

従来のファイナンス・リースとオペレーティング・リースの違い

新基準を理解するためには、従来の会計基準におけるリースの区分を把握しておくことが重要です。従来は、リース契約をその経済的実態に応じて「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の2つに分類し、異なる会計処理を行っていました。

項目ファイナンス・リースオペレーティング・リース
概要実質的に資産を購入したのと同様のリース(ノンキャンセラブル、フルペイアウト)ファイナンス・リース以外のリース(一般的なレンタルに近い)
BSへの計上要(オンバランス)
リース資産とリース債務を計上
不要(オフバランス)
注記情報として開示
PLへの計上減価償却費と支払利息支払リース料

新リース会計基準では、このファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分が原則として撤廃されます。これにより、これまで費用処理のみで済んでいた多くのオペレーティング・リース(例:オフィス賃貸借、複合機リースなど)が、BSに資産・負債として計上されることになるのです。

変更点2 損益計算書(PL)への影響

オンバランス化は、貸借対照表(BS)だけでなく損益計算書(PL)にも大きな影響を及ぼします。特に、これまでオペレーティング・リースを多く利用してきた企業では、費用の計上方法と金額の推移が大きく変わるため注意が必要です。

費用計上の方法が減価償却費と支払利息に変わる

従来のオペレーティング・リースでは、毎月支払うリース料がそのまま「支払リース料」として費用計上されていました。そのため、リース期間中の費用は基本的に定額でした。

一方、新リース会計基準では、計上された資産・負債に対応して、費用は以下の2つに分けて計上されます。

  • 減価償却費:使用権資産をリース期間にわたって償却する費用。通常、定額法で計算されます。
  • 支払利息:リース負債の残高に対して発生する利息費用。利息法で計算されるため、返済が進むにつれて減少します。

この結果、2つの費用の合計額は、リース期間の初期に大きく、期間の経過とともに減少していく「費用前倒し」の形になります。これは、従来の定額計上と大きく異なる点であり、期間比較を行う際の利益分析に影響を与える可能性があります。また、営業利益の計算上、支払リース料が減価償却費と支払利息に分解されることで、EBITDA(利払前・税引前・減価償却前利益)などの経営指標が改善する効果も見込まれます。

変更点3 借手の会計処理と具体的な仕訳例

理論だけでなく、具体的な会計処理の流れを仕訳例で確認しましょう。ここでは、リース契約を開始した時、リース料を支払った時、決算を迎えた時の3つのタイミングに分けて解説します。

【設例】
リース期間:5年
年間リース料:120万円(期末払い)
リース料総額:600万円
割引率:3%
リース負債の現在価値(リース開始時点):551万円(簡略化した数値)
※使用権資産はリース負債と同額と仮定します。

リース契約開始時の仕訳

リース資産を使用する権利(使用権資産)と、将来の支払義務(リース負債)を同額で計上します。

借方金額貸方金額
使用権資産5,510,000リース負債5,510,000

リース料支払時の仕訳(1年目期末)

支払ったリース料120万円のうち、利息部分と元本返済部分に分けて処理します。

  • 支払利息:5,510,000円 × 3% = 165,300円
  • リース負債の返済額:1,200,000円 – 165,300円 = 1,034,700円
借方金額貸方金額
リース負債1,034,700現金預金1,200,000
支払利息165,300

決算時の仕訳(1年目期末)

使用権資産をリース期間(5年)で減価償却します。

  • 減価償却費:5,510,000円 ÷ 5年 = 1,102,000円
借方金額貸方金額
減価償却費1,102,000使用権資産減価償却累計額1,102,000

このように、新リース会計基準では、一つのリース契約に対して複数の仕訳が必要となり、特にリース負債の利息計算や残高管理が複雑化します。そのため、経理部門の業務フローや会計システムの見直しが不可欠となります。

中小企業への影響は?財務諸表はどう変わるのか

新リース会計基準の影響(中小企業) 貸借対照表(BS) 資産と負債の増加 資産 負債 変更前 変更後 変更前 変更後 総資産 使用権資産 総負債 リース負債 総資産・負債がともに増加 損益計算書(PL) 費用の前倒し計上 期間 費用額 1 2 3 4 5 従来:リース料(一定) 新基準:減価償却費+利息(前半高) 経営指標への影響 自己資本比率 低下 負債比率 上昇 ROA 低下 EBITDA 増加 見かけの変化(会計基準変更による影響)

新リース会計基準の導入は、特にこれまで多くのリース契約をオフバランス処理してきた中小企業にとって、財務諸表の見え方に大きなインパクトを与えます。具体的に、貸借対照表(BS)、損益計算書(PL)、そしてそれらから算出される経営指標にどのような影響が及ぶのか、詳しく見ていきましょう。

貸借対照表(BS)への影響 資産と負債の増加

新リース会計基準における最も大きな変更点は、これまで費用処理(オフバランス)が可能だったオペレーティング・リースが、原則として資産と負債の両建てで貸借対照表(BS)に計上されることです。これにより、企業の財政状態の透明性が高まる一方で、見た目の財務体質は大きく変化します。

具体的には、リース物件を使用する権利を「使用権資産」として資産の部に、将来のリース料支払義務を「リース負債」として負債の部に計上する必要があります。例えば、本社オフィスの賃貸借契約や、営業用の社用車、コピー機のリース契約などが対象となります。

この変更がBSに与える影響を、以下の表で確認してみましょう。

変更前(従来の会計基準)変更後(新リース会計基準)
資産の部従来通りの資産従来通りの資産 + 使用権資産
負債の部従来通りの負債従来通りの負債 + リース負債
純資産の部変動なし変動なし

表からもわかる通り、新基準の適用によって総資産と負債総額がともに増加します。自己資本(純資産)の額は変わらないため、結果として自己資本比率が低下し、財務の安全性が低くなったように見える可能性があります。これは、金融機関からの融資審査などにも影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。

損益計算書(PL)への影響 費用の前倒し計上

損益計算書(PL)においても、費用の計上方法が大きく変わります。従来、オペレーティング・リースでは支払リース料を毎月定額で費用計上していましたが、新基準では費用が「減価償却費」と「支払利息」の2つに分解されます。

  • 減価償却費:使用権資産をリース期間にわたって償却する費用。定額法で計上する場合、期間中一定額となります。
  • 支払利息:リース負債の未返済残高に対して発生する利息。残高が大きいリース期間の初期に多く、返済が進むにつれて減少していきます。

この結果、リース期間全体で見た費用総額は変わりませんが、費用が期間の前半に多く計上される「前倒し」の状態になります。これにより、リース開始当初は利益が圧迫される可能性があります。

一方で、会計上の利益の段階によっては、ポジティブな影響が出るケースもあります。支払リース料は通常「販売費及び一般管理費」として計上されますが、新基準では減価償却費が「販売費及び一般管理費」、支払利息が「営業外費用」に計上されます。そのため、営業利益やEBITDA(利払前・税引前・減価償却前利益)は、従来よりも大きく見えることがあります。

経営指標への影響 自己資本比率やROAの悪化に注意

貸借対照表(BS)と損益計算書(PL)の表示が変わることで、企業の経営状態を分析するための各種経営指標にも影響が出ます。特に注意すべき指標を以下にまとめました。

経営指標計算式影響理由
自己資本比率自己資本 ÷ 総資産悪化(低下)分母である総資産が増加するため。
負債比率負債合計 ÷ 自己資本悪化(上昇)分子である負債合計が増加するため。
総資産利益率(ROA)当期純利益 ÷ 総資産悪化(低下)分母である総資産が増加するため。
EBITDA営業利益 + 減価償却費改善(増加)支払利息が営業外費用となり、営業利益が押し上げられるため。

このように、安全性や収益性を示す一部の指標が悪化する可能性があります。重要なのは、これらの指標の変化が、事業の実態が悪化したわけではなく、あくまで会計基準の変更によるものであるという点です。この事実を、金融機関や株主、取引先といったステークホルダーに対して、事前に丁寧に説明し、理解を得ておくことが極めて重要になります。

新リース会計基準に向けて今すぐ準備すべきこと

新リース会計基準に向けた準備ロードマップ(4ステップ) 新リース会計基準への移行に向け、ステップ1 契約把握、ステップ2 方針決定と影響試算、ステップ3 業務フロー・システム再構築、中小企業向けの経過措置・簡便法を示した図。 新リース会計基準に向けて今すぐ準備すべきこと 実務対応の4ステップと要点 ステップ1 契約把握 全社の契約を洗い出し 実質リースも含める 台帳を作成し一元管理 管理項目: 期間/料/OP 主な管理項目 契約相手・番号 資産種類・数量 開始/終了・解約不能 月額/総額/スケジュール 延長/購入/解約OP 維持管理等の付随費用 ステップ2 方針と試算 リース期間を定義 割引率を決定 使用権資産/負債を算出 BS/PL影響を試算 想定メリット 指標変動の予測 関係者への説明準備 投資/資金計画の見直し ステップ3 業務/システム 手順を契約〜終了まで整備 減価償却/利息を自動計算 変更管理と内部統制 システム対応を検証 導入/改修/外部連携 選択肢 既存の改修/バージョンUP 専用リース管理の導入 外部サービスと連携 簡便法/経過措置 短期リース(12ヶ月以内) 少額リースを資産単位判定 オンバランス不要(費用処理) 適用契約を明確に管理 初度適用は修正リトロ可 留意点 対象範囲の明確化 適用方針の一貫性 開示/注記の整備 ポイント 影響が大きい場合は早期に対策を検討し、金融機関・株主等への説明と計画見直しを並行。

新リース会計基準の適用は、単なる会計処理の変更にとどまらず、企業の財務戦略や業務プロセス全体に影響を及ぼす可能性があります。そのため、適用開始が近づいてから慌てることのないよう、計画的かつ段階的に準備を進めることが極めて重要です。ここでは、新基準に向けて企業が今すぐ着手すべき4つのステップを具体的に解説します。

ステップ1 リース契約の網羅的な把握

準備の第一歩は、社内に存在するすべてのリース契約を正確かつ網羅的に把握することです。これまでは資産計上が不要だったオペレーティング・リースも新基準の対象となるため、経理部門が管理している契約だけでなく、各事業部門や支店、営業所などが個別に締結している契約もすべて洗い出す必要があります。

特に、複合機やPC、サーバー、社用車、什器備品、さらには不動産の賃貸借契約など、「リース」という名称でなくても実質的にリースに該当する契約が含まれていないか、注意深く確認しましょう。契約をリストアップする際には、以下の情報を整理・管理することが後のステップで役立ちます。

管理項目確認すべき内容
契約内容契約相手先、契約締結日、契約番号など
リース物件資産の種類、名称、数量、型番など
リース期間リース開始日、終了日、解約不能期間
リース料月額リース料、リース料総額、支払スケジュール、固定か変動か
オプション情報契約の延長オプション、購入オプション、解約オプションの有無とその条件
その他維持管理費用など、リース料以外の支払いの有無と内容

これらの情報を一元管理できる台帳を作成し、全社的なリース契約の実態を可視化することが、円滑な移行の鍵となります。

ステップ2 会計処理方針の決定と影響額の試算

リース契約の全体像が把握できたら、次に自社の会計処理方針を決定し、新基準適用による財務的な影響額を試算します。特に重要なのが「リース期間」と「割引率」の決定です。

リース期間は、契約上の解約不能期間に、借手が延長オプションを行使することが合理的に確実な期間を加算して算定します。割引率は、原則としてリース契約で定められた「貸手の計算利子率」を使用しますが、それが不明な場合は「借手の追加借入利子率」を用いることになります。

これらの要素を基に、各リース契約について使用権資産とリース負債の金額を算出し、貸借対照表(BS)や損益計算書(PL)に与える影響をシミュレーションします。この影響額の試算を早期に行うことで、以下のようなメリットがあります。

  • 自己資本比率やROA(総資産利益率)などの経営指標がどの程度変動するかを事前に予測できる
  • 金融機関や株主、取引先などのステークホルダーに対して、財務状況の変化を適切に説明するための準備ができる
  • 影響の大きさによっては、今後の設備投資計画や資金調達計画の見直しを検討するきっかけとなる

試算の結果、財務への影響が大きいと判断される場合は、早急に対策を検討する必要があります。

ステップ3 業務フローと会計システムの再構築

新リース会計基準への対応は、経理部門だけの問題ではありません。リース契約の管理、会計処理、情報開示といった一連の業務フロー全体の見直しが求められます。

具体的には、リース契約を締結する際の申請・承認プロセスから、資産計上、減価償却費と支払利息の計算、月次・年次決算での仕訳計上、契約内容の変更管理、そして最終的な契約終了時の処理まで、新たなルールに沿った業務手順を確立しなければなりません。

また、現在使用している会計システムが新基準に対応可能かを確認することも急務です。多くのリース契約を抱える企業にとって、Excelなどによる手作業での管理は、計算ミスや管理漏れのリスクを増大させ、内部統制上の課題にもなりかねません。システムの対応状況によっては、以下のような選択肢を検討する必要があります。

  • 既存の会計システムのバージョンアップまたは改修
  • 新リース会計基準に対応したリース管理システムの新規導入
  • 会計システムと連携可能な外部サービスの利用

システムの導入や改修には時間を要するため、早期に情報収集と検討を開始することが賢明です。

中小企業が利用できる経過措置や簡便法

新基準の導入に伴う実務負担を考慮し、特に中小企業などに向けて、いくつかの経過措置や簡便的な会計処理が認められています。これらの選択肢を適切に活用することで、移行にかかるコストや手間を大幅に削減できる可能性があります。

特に重要な簡便法として、「短期リース」と「少額リース」の2つが挙げられます。これらの要件を満たすリース契約については、使用権資産とリース負債を計上せず、従来通り賃貸借処理(オフバランス処理)を継続することが可能です。

種類適用要件会計処理
短期リースリース期間がリース開始日時点で12ヶ月以内であるリース。購入オプションが付いている場合は対象外となる可能性があります。支払リース料を、発生した期の費用として計上します(オンバランス不要)。
少額リースリース対象となる原資産が少額であるリース。個々の資産単位で判定します。(金額の基準は今後の実務指針等で明確化される見込みです)短期リースと同様に、支払リース料を費用として計上します(オンバランス不要)。

自社が締結しているリース契約の中に、これらの簡便法を適用できるものがないかを確認し、会計方針として採用するかどうかを検討しましょう。ただし、簡便法を適用する場合でも、どの契約に適用したかを適切に管理する必要がある点には注意が必要です。また、適用初年度における会計処理の方法として、過去に遡って修正する「原則的な取扱い(リトロスペクティブ適用)」と、適用開始日の累積的影響額を利益剰余金に加減算する「簡便的な取扱い(修正リトロスペクティブ適用)」が用意されており、自社の状況に応じて有利な方法を選択できます。

まとめ

本記事では、新リース会計基準の重要な変更点、中小企業への影響、そして具体的な準備について解説しました。新基準の最大のポイントは、これまで貸借対照表(BS)に計上されていなかったオペレーティング・リースを含め、原則すべてのリースを資産・負債として計上する「オンバランス化」です。これは、企業の財務実態をより正確に投資家へ開示するため、IFRS(国際財務報告基準)など国際的な会計基準との整合性を図る目的があります。

この変更により、多くの企業、特にリース契約の多い中小企業では、総資産と負債が同時に増加します。損益計算書(PL)上では、費用が減価償却費と支払利息に置き換わり、契約初期の費用負担が重くなる傾向があります。その結果、自己資本比率や総資産利益率(ROA)などの経営指標が悪化し、金融機関の評価に影響を与える可能性があるため注意が必要です。

新リース会計基準への対応は待ったなしです。まずは自社の全リース契約を正確に把握し、財務諸表への影響額を試算することから始めましょう。その上で、会計方針の決定、業務フローやシステムの再構築を計画的に進めることが不可欠です。経過措置や簡便法も活用しつつ、早期に準備を進めることが、新基準へのスムーズな移行の鍵となります。

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